いびきがうるさい、寝苦しくて何度も目が覚めてしまう、日中に強い眠気を感じる、といった症状がある方は、突然死のリスクがある危険ないびきの可能性があります。
本記事では、いびきの種類や症状、原因を解説します。また、手術やCPAPを用いた治療方法もあわせて紹介します。睡眠時の悩みを抱えている方や睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、ぜひ参考にしてみてください。
いびきの種類
いびきは原因によって単純性いびき、睡眠時無呼吸症候群、上気道抵抗症候群の3種類に分類されます。
種類によっては生活習慣病や突然死を引き起こすリスクがあるため、適切な治療を施さなければなりません。また、症状がひどい場合には手術を受ける必要があります。
種類ごとにいびきの特徴や症状を解説します。自身がどのいびきに当てはまるかチェックしてみましょう。
単純性いびき症
睡眠時にいびきをかくが無呼吸症状や低酸素状態を伴わない場合は、単純性いびき症と診断されます。
また、呼吸状態には問題がなく自身は寝苦しさを感じていないため、単純性いびき症によって日中に眠くなることはありません。
単純性いびき症の原因
- 鼻づまり
- 鼻の骨が彎曲している
- 扁桃腺が腫れている
- あごが小さい
- 肥満
- 飲酒
- 睡眠薬を服用している
これらの原因により、気道が狭くなったり塞がったりするといびきをかきます。風邪や花粉症で鼻づまりを起こしていたり、飲酒したりすることで気道が狭くなっている場合には、原因が解消されればいびきも解消されるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群はその名の通り、睡眠時に無呼吸症状を起こす状態です。いびきは睡眠時無呼吸症候群の症状のひとつで、いびきのかき方に特徴があります。
十数秒間呼吸が止まった後に大きないびきをかく、という症状を睡眠時に繰り返します。そのため、体内の酸素が不足して低酸素状態に陥ったり、睡眠の質が低下して日中に強い眠気を感じたりします。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、単純性いびき症の原因に加えて脳や心臓などの病気が考えられ、病気によって呼吸に異常が現れている状態です。
また、睡眠時無呼吸症候群はさまざまな弊害をもたらします。
睡眠時無呼吸症候群によって起こる弊害
- 心不全
- 心筋梗塞
- 不整脈
- 脳卒中
- 日中の強い眠気
- パフォーマンスの低下
低酸素状態が続くことで命に関わる病気のリスクが高まり、日中のパフォーマンスは低下します。また、集中力が欠如するため重大な事故に繋がる危険性があります。
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
上気道抵抗症候群
鼻から咽頭までの空気の通り道(上気道)が塞がったり狭くなったりすることで空気抵抗が増し、いびきをかいている状態が上気道抵抗症候群です。
単純性いびき症と同様の原因で上気道抵抗症候群を引き起こします。
上気道抵抗症候群では無呼吸症状や低酸素状態を起こすことはありませんが、悪化すると睡眠時無呼吸症候群を発症する恐れがあります。
上気道抵抗症候群によって起こる弊害
- 睡眠時に何度も覚醒してしまう
- 寝苦しさ
- 日中の強い眠気
睡眠時無呼吸症候群を発症する前に治療することをおすすめします。
いびきをかく主な原因
いびきの原因は、骨格や体のつくりの問題、一時的な体調の問題などが考えられます。原因を取り除けばいびきが改善される場合があるため、自身のいびきの原因を知ることが大切です。それぞれの原因を詳しく解説します。
筋力の低下
いびきの原因のひとつが、舌や口内の筋力の低下です。仰向けで眠った場合、舌が喉の奥にわずかに沈みます。しかし、舌や喉の筋力が低下すると舌が深く沈み込むため、気道を塞ぎいびきをかきます。
加齢や体重増加によって舌や口内の筋力が低下するため、中高年層や肥満の方に多い原因です。舌や口周りの筋トレをしたり、横向きで眠るよう心掛けたりすることで改善可能です。
口蓋垂や扁桃が大きい
気道が塞がる原因として、口蓋垂や扁桃が大きいことが挙げられます。風邪やストレス、疲労などによって口蓋垂や扁桃腺が腫れることがありますが、元々の身体的特徴である場合もあります。
身体的特徴として口蓋垂や扁桃が大きい場合には、睡眠時の無呼吸発作や呼吸障害を起こしやすいため注意が必要です。
必ずしも睡眠時無呼吸症候群を発症するわけではありませんが、口蓋垂や扁桃の肥大は内服や手術によって改善可能です。
あごが小さい
成長段階で骨格も成長していきますが、大人になっても平均よりあごの大きさが小さい方がいます。あごが小さい方はあごや舌の筋力が弱いことが多く、仰向けに眠ると舌が喉の奥に沈みやすいため、いびきをかきやすい特徴があります。
また、歯並びや噛み合わせが悪くなったり、睡眠時無呼吸症候群を発症したりするリスクが高いため注意が必要です。あごが小さい場合は、骨格を変える手術や歯列矯正によって治療可能です。
口呼吸
いびきをかく方の大半が口呼吸で眠っており、口を開けたまま大きないびきをかいています。口を開けると舌の筋肉が緩むため、舌が喉の奥に沈み込みやすくなります。沈んだ舌が気道を塞ぐことで、いびきや睡眠時無呼吸症候群を発症します。
口呼吸の原因は多くの場合、鼻の問題です。風邪や花粉症による一時的な鼻づまり、鼻炎や副鼻腔炎による慢性的な鼻づまり、鼻の骨の湾曲などが考えられます。
口呼吸を改善するためには、鼻の問題を解消することが大切です。
肥満
肥満症の方は首や口内、舌の回りに脂肪がつきやすくなります。首や口内の脂肪は気道を狭め、舌についた脂肪は気道を塞ぐ原因となります。
日常生活において呼吸がしづらい、食べ物が飲み込みづらいといった違和感を感じている方は、首や口内などに過剰な脂肪がついている可能性があるでしょう。
とくに、BMI値30以上の肥満の方は上気道抵抗症候群や睡眠時無呼吸症候群を併発しやすいため、注意が必要です。
睡眠薬の摂取
睡眠薬をはじめとする一部の医薬品には、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩作用があります。筋弛緩作用により口内や舌の筋力が低下するため、気道を塞ぎいびきをかく場合があります。
睡眠薬の他に、緊張型頭痛や腰痛などに処方される薬も筋弛緩薬に該当します。
薬の作用が原因でいびきをかいており、睡眠時無呼吸症候群を発症している場合には、日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
睡眠薬や筋弛緩薬の服用をやめれば改善する場合がありますが、不眠や筋肉の痛みが再発してしまうでしょう。薬を服用しなければならない原因の改善と並行して、睡眠時無呼吸症候群の治療をおこなうことが大切です。
飲酒
睡眠薬や筋弛緩薬と同様に、アルコールにも筋弛緩作用があります。また、アルコールには血行を促進させる効果もあるため、鼻の血管が膨張して鼻づまりを起こしやすくなります。
そのため、飲酒時の筋弛緩作用や鼻づまりにより、いびきをかきやすくなるのです。意識が朦朧とするほど飲酒することをやめ、飲酒後は横向きで眠ることを意識しましょう。
女性ホルモンの分泌量
女性は、加齢や閉経に伴い女性ホルモンの分泌量が低下します。女性ホルモンが不足すると更年期障害や骨粗鬆症など、さまざまな病気を引き起こす原因となります。諸症状のひとつが、気道が狭くなる症状です。
女性ホルモンには気道を拡張する作用があります。しかし、女性ホルモンの分泌量が低下することで気道が狭くなるため、睡眠時の呼吸に影響を与えます。
40代頃からいびきをかくようになった女性や、閉経後にいびきが気になるようになった女性は、女性ホルモンの分泌量が関係している可能性が高いでしょう。
ホルモン補充療法で改善する可能性もありますが、他にも原因がある場合があるため、医師に相談することをおすすめします。
いびきの手術や治療をしないことのデメリット
同居人がいる方はいびきのうるささを指摘されたり、いびきの種類によっては睡眠の質が低下したり、何らかのデメリットが生じます。
大半の方は適切な治療や手術を受ければ改善しますが、一人暮らしで誰にも迷惑をかけていない場合や睡眠の質に不満がない場合は、治療をせずに放置している方もいるでしょう。
しかし、慢性的ないびきにはさまざまなデメリットがあります。いびきを放置した場合に考えられるデメリットを紹介します。
パフォーマンスの低下
主に、睡眠時無呼吸症候群では無呼吸症状や低酸素状態により睡眠の質が低下します。寝苦しさから睡眠の途中で何度も目が覚め、身体が十分に休まらないため、日中の眠気や倦怠感に繋がります。
日常生活におけるパフォーマンスや集中力が低下し、仕事に支障をきたしたり重大な事故を招いたりする恐れがあります。
とくに、車を運転する方や複雑な機械を操作する方、身体を使った作業をする方などは注意が必要です。
生活習慣病につながる
いびきは呼吸障害に分類され、気道が塞がり呼吸がしづらい状態です。
とくに、睡眠時無呼吸症候群では体内に酸素が十分に取り入れらないため低酸素状態となります。この低酸素状態が、あらゆる病気の原因のひとつです。
血液中の酸素濃度が低下すると、酸素の量を維持するために心臓が心拍数を増やし、酸素を全身に届けようとします。心臓への過度な負担により心不全や心筋梗塞、狭心症、不整脈、高血圧などの病気を引き起こすリスクが高まります。
また、低酸素状態や睡眠の質の低下により、脳卒中や糖尿病などの生活習慣病にも繋がります。
突然死のリスク
睡眠時無呼吸症候群では十数秒間呼吸が止まることもあり、ひどい場合はそのまま呼吸が停止して突然死を招く恐れがあります。
また、前述のとおり心臓に負担がかかるため、心不全や心筋梗塞を起こして突然死するケースも報告されています。慢性的な睡眠不足によって重大な事故を起こし、命を落とす可能性もあるでしょう。
比較的軽度ないびきでも、悪化すると睡眠時無呼吸症候群になる可能性があるため、治療や手術、生活習慣の改善によって早めに対処することが大切です。
医療クリニックを受診すべきいびきの特徴
風邪や花粉症、飲酒などが原因で起こる一時的ないびきは、原因が解消されればいびきも改善する場合が大半です。しかし、上気道抵抗症候群や睡眠時無呼吸症候群を発症している場合には治療や手術を受ける必要があります。
クリニックを受診した方がよいいびきの特徴
- 一回の呼吸の間隔が短く、小刻みないびき
- いびきの途中で呼吸が止まる
- 息を吐きだすときも音がする
- 熟睡できていないと感じる
- 起きている間に強い眠気を感じる
- 寝ても疲れが取れない
同居人がいる方は、睡眠時の様子を確認してもらいましょう。一人暮らしの方は録音や録画をして確認可能です。
また、きちんと眠っているはずなのに眠気が強い方や疲れが取れない方も、いびきによって睡眠の質が低下している可能性があります。
いくつかの項目に該当する方や睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は、クリニックを受診しましょう。
いびきの手術が必要な症状
比較的軽度のいびきは、生活習慣の改善や眠り方の工夫によって改善する場合があります。しかし、身体的特徴が原因の場合には手術や専門的な治療が必要です。
いびきを改善するための手術が必要な症状を紹介します。
上気道の空気の通りが悪い
上気道(鼻から咽頭)が狭く、空気の通りが悪い場合には手術で改善可能です。口蓋垂や扁桃が肥大している方や軟口蓋が低い方は、喉が狭く気道が塞がりやすい特徴があります。
また、あごが小さい方も上気道が狭くなりやすく、いずれも手術によって治療をおこないます。レーザー手術や骨格形成術、歯列矯正などが代表的です。
鼻の疾病
慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の方は睡眠時も鼻づまりがひどい場合が多く、いびきの原因となります。内服薬のみでは鼻づまりが解消されない場合には、レーザー手術によって治療をおこないます。
また、鼻の骨が曲がっていることで空気の通りが悪い場合は、鼻骨の矯正手術が推奨されます。鼻呼吸しづらいために口呼吸になり、結果的にいびきをかいている場合が多いため、まずは鼻の疾病を治療することが大切です。
医療クリニックのいびき手術の種類と費用相場
日本国内では、厚生労働省が承認した医薬品や医療機器を用いた、病気の治療を目的とした診療や手術には保険が適用されます。
いびきの治療を目的とした手術の種類や費用相場を紹介します。
尚、呼吸障害(いびき)の治療を目的としている場合には保険適用となりますが、クリニックによっては自由診療の場合があるため、詳細は各クリニックに確認してみてください。
軟口蓋形成術
- 手術方法:全身麻酔で口蓋扁桃を摘出し、軟口蓋を再形成して口内や気道を拡げる
- 入院の有無:1~2週間の入院が必要
- 費用相場:約3万円
軟口蓋形成術は、口蓋垂や扁桃が肥大している場合におこないます。術後は傷口から出血したり細菌感染を起こしたりする恐れがあるため、1~2週間入院して経過観察が必要です。
上下顎前方移動術
- 手術方法:全身麻酔で上顎や下顎を前方に移動させ、気道を拡げる
- 入院の有無:7~10日程度の入院が必要
- 費用相場:30~45万円
あごが小さく気道が狭い場合や噛み合わせが悪い場合に上下顎前方移動術をおこないます。
ただし、上下顎前方移動術を受ける前に、歯並びが悪い場合は歯列矯正をおこなう必要があります。歯の矯正に1年以上要する場合があるため、矯正が済んでから上下顎前方移動術に移ります。
歯列矯正費用や手術費用、その間の通院費用もかかりますが、高額療養費制度により治療費用を抑えることが可能です。
口蓋扁桃摘出術
- 手術方法:全身麻酔で口蓋扁桃を摘出し、気道を拡げる
- 入院の有無:1~2週間の入院が必要
- 費用相場:約10万円
口蓋扁桃摘出術は扁桃が肥大している場合におこなう手術です。術後は傷口から出血したり細菌感染を起こしたりする恐れがあるため、1~2週間入院して経過観察が必要です。
鼻中隔彎曲矯正術
- 手術方法:全身麻酔及び局所麻酔で曲がった骨や軟骨を摘出し、鼻の形を矯正する
- 入院の有無:約1週間の入院が必要、日帰り手術の場合もあり
- 費用相場:2~10万円
鼻中隔彎曲矯正術は、鼻の骨が曲がっている方や慢性副鼻腔炎の方におこなう手術です。全身麻酔で手術をおこない、1週間程度入院する方法が一般的ですが、近年では局所麻酔で日帰り手術をおこなっているクリニックもあります。
日帰り手術のリスクを十分に確認したうえで検討しましょう。
下鼻甲介骨切除術
- 手術方法:全身麻酔で下鼻甲介骨を切除する
- 入院の有無:2~5日程度の入院が必要
- 費用相場:約2万円
下鼻甲介骨切除術は下鼻甲介粘膜下の出っ張った骨を切除する手術で、鼻中隔弯曲症の治療方法のひとつです。鼻中隔彎曲矯正術より短期間ですが、入院を伴う手術です。
レーザー手術
- 手術方法:局所麻酔で口蓋垂や扁桃にレーザーを照射し、切断して気道を拡げる
- 入院の有無:日帰り手術
- 費用相場:約4万円
口蓋垂や扁桃が大きく、気道が狭い場合にはレーザー手術で気道を拡げることが可能です。全身麻酔や骨を摘出する必要がないため、他の外科手術よりリスクが低い治療です。
ただし、気道を拡げるためには複数回のレーザー手術が必要な場合があります。
手術以外の治療
手術では骨格を再形成したり、呼吸の妨げになっている骨や軟骨を摘出したりします。しかし、手術をおこなっても症状が改善しない可能性や顔の骨格が変化するデメリットがあります。
手術以外の治療を受けたい方は、マウスピースによる歯列矯正やCPAPの利用がおすすめです。
マウスピース制作
- 治療方法:睡眠時にマウスピースを装着し、鼻呼吸を促したり歯列やあごの骨格を矯正する
- 費用相場:1~3万円
マウスピースを装着すると口が閉じるため、鼻呼吸がしやすくなります。また、歪んだあごの位置を正したり歯列が矯正されたりするため、口内や気道を拡げる効果が期待できます。
ただし、マウスピースによる治療は一時的な対症療法のため、手術や肥満の解消によって根本治療をおこなうことが大切です。マウスピースは歯科で制作可能ですが、保険が適用されるためには睡眠時無呼吸症候群の診断書が必要です。
CPAPの利用
- 治療方法:睡眠時にCPAPを装着し、圧力をかけながら空気を送り込む
- 費用相場:レンタル1か月約5,000円
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)は、鼻と口を覆うように装着したマスクから空気を送り込み、気道に圧力をかける治療方法です。
一般的にはCPAPの機械をレンタルして利用するため、1か月ごとのレンタル費用がかかります。また、月1回クリニックで診察を受ける必要があります。マウスピースの装着と同様にCPAPも対症療法のため、症状がひどい場合には根本治療をおすすめします。
いびきの検査から手術までの流れ
実際にいびきの症状でクリニックを受診した場合の、検査から手術までの流れを解説します。
1:通いやすいクリニックを選択
いびきの治療はいずれも、複数回に渡って通院したり定期的に診察を受ける必要があります。入院を伴う手術を受けた際は術後の経過観察で通院する可能性が高いでしょう。
また、睡眠時無呼吸症候群の方は強い眠気に襲われる場合も多いため、自家用車での長距離運転はおすすめできません。そのため、自宅や職場から近く、通いやすいクリニックを選ぶことをおすすめします。
2:外来で診療
検査を受ける前に医師の診察を受けます。睡眠状態や症状を問診し、鼻や口内の状態を確認して治療方針を決定します。
診察前の無料カウンセリングをおこなっていたり、予約制でスムーズに受診できたり、クリニックごとに診療の手順が異なります。
3:検査
睡眠時無呼吸症候群によるいびきの場合は治療が必要なため、睡眠時無呼吸症候群かどうかを調べるための検査をおこないます。
検査方法
- ポリソムノグラフィ―検査(PSG検査)
- パルスオキシメーター検査
- アプノモニター検査
- ウォッチパットユニファイド など
ポリソムノグラフィ―検査は睡眠時の姿勢や脳波、呼吸状態、心電図、酸素飽和度などを記録可能な精密検査です。自宅に機械を持ち帰る方法と、入院して受ける方法があります。
ポリソムノグラフィ―検査を導入しているクリニックは限られているため、問診による症状や血中酸素飽和度を測る簡易検査のみでも診断が可能です。
4:治療や手術の提案と決定
鼻や口内の状態、問診、睡眠時無呼吸症候群の検査などを踏まえ、治療方針を決定します。手術が必要と判断された場合には手術を提案されるため、自身でよく考えて手術を受けるか決めましょう。
手術の方法によって入院期間や術後の注意点が異なります。仕事や家庭の都合に合わせて、最適な治療方法を選択することが大切です。
5:手術
いびき治療の手術は、気道を拡げたり鼻の通りをよくする手術が代表的です。手術は全身麻酔や局所麻酔でおこなわれ、入院手術と日帰り手術があります。
術後の出血や細菌感染のリスクが高い場合には1~2週間入院して経過観察をおこなう必要があります。
自宅でできるいびきのセルフケア
効果的に治療をおこないたい方や、いびきをかいているが通院するほどではない方は自宅でできるセルフケアがおすすめです。
いびき改善のセルフケアを、5種類紹介します。
ツボを押す
扁桃の腫れや鼻づまりが原因でいびきをかいている場合には、ツボを押すことで症状の改善が期待できます。
扁桃の腫れ
- 合谷(ごうこく):手の人差し指と親指の付け根
- 頬車(きょうしゃ):エラの角から指1本分斜め内側
- 少商(しょうしょう):手の親指の爪の、内側の付け根
鼻づまり
- 鼻通(びつう):左右の小鼻の上のくぼみ
- 迎香(げいこう):左右の小鼻の脇
- 上星(じょうせい):前髪中央の生え際から約2cm上
- 印堂(印堂):眉間の中央
扁桃が腫れて呼吸が苦しい場合や鼻づまりがひどい場合には、これらのツボを指圧してみてください。
対策グッズの利用
いびきは鼻づまりによる息苦しさや口呼吸などが原因で起こるため、対策グッズで改善できる場合があります。
- いびき対策グッズ
- 口を閉じるテープ
- 鼻腔を拡げるテープ
- 枕 など
鼻腔を拡げて鼻呼吸を促すために、専用のテープによって物理的に口を閉じたり鼻腔を拡げることが可能です。
また、枕の高さが合わないせいで喉や気道が塞がり、いびきをかいている可能性もあります。適切な高さの枕に切り替えることで症状が改善することがあるため、枕専門店で自身に合った枕を作る方法もおすすめです。
ただし、対策グッズのみでは改善しないほど症状が進行している可能性もあるため、症状の改善が見られない場合にはクリニックを受診してみてください。
横向きで寝る
いびきの原因のひとつとして、仰向けに眠った際に舌が気道を塞ぐことが挙げられます。そのため、横向きで眠る習慣をつける方法がおすすめです。
しかし、仰向けで眠る癖がついている方は、寝返りを打って仰向けに戻ってしまう可能性があります。眠る姿勢のみでは解決しない場合には、クリニックを受診して適切な治療を受けましょう。
禁酒や禁煙
アルコールの筋弛緩作用によりいびきをかきやすくなりますが、喫煙もいびきを引き起こす原因となります。煙草の煙が喉や鼻の粘膜を刺激し、扁桃炎や慢性鼻炎、慢性副鼻腔炎を発症させる可能性があります。
飲酒や喫煙はいずれもいびきの原因になる恐れがあるため、いびきを改善したい場合は禁酒や禁煙することが大切です。
ダイエット
肥満によって舌や口内、首などに脂肪がつくと、気道が塞がりいびきの原因となります。BMI値25以上の方は肥満に該当するため、生活習慣の改善や運動でダイエットしましょう。
日常生活でも呼吸が苦しいと感じる場合はウォーキングやストレッチなどの軽い運動から始め、徐々に運動量を増やすことをおすすめします。
また、舌や口内の筋力を高めることも大切なため、身体の筋トレと並行して顔や口周りの筋トレもおすすめです。
いびきの手術についてよくある質問
いびき治療のための手術に関する、よくある質問に回答します。手術を受けるか迷っている方や術後の状態が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
手術を受けるといびきは確実に改善する?
軟口蓋形成術やレーザー手術などの一部の手術では、切開した箇所が癒着したり縮んでしまったりする可能性があります。口内や気道が十分に拡がらず、効果があまり得られない場合があるでしょう。そのため、手術を受けたからといって確実に改善するとは限りません。
ただし、複数回レーザー手術を施したり、マウスピースやCPAPなどの他の治療方法を併用したりすることで効果を高めることが可能です。手術のみに頼らず、他の治療方法や生活習慣の見直しも同時におこない、改善を目指しましょう。
治療開始からどのくらいの期間で効果を実感できる?
手術では、切開した箇所の傷が塞がるまでに1週間~1か月程度かかる場合があります。傷が塞がって腫れが治まるまでは違和感を感じる可能性があるため、効果を実感できるまでの期間は最短で手術後1週間程度です。
また、手術の種類や症状の程度、体質によって効果の現れ方に差があるため、手術を受ける前に医師に確認することをおすすめします。
レーザーは痛みが強い?
一般的なレーザー手術では麻酔を使用するため、手術中は痛みを感じません。ただし、術後1時間程度で麻酔が切れるため、手術した箇所や周辺が痛む可能性があります。
痛み止めを処方してもらい、痛みがひどい場合は服用して様子を見ましょう。また、術後の出血がひどい場合には医師に相談してみてください。
術後どのくらい効果が持続する?
鼻中隔彎曲矯正術や下鼻甲介骨切除術では、呼吸を妨げる骨や軟骨を切除して取り除くため、半永久的に効果が持続します。
ただし、口蓋垂や扁桃の腫れに対する手術やレーザー手術では再発する恐れがあるため、効果の持続期間は1年~数年です。効果が持続している間に舌の筋肉を鍛えたりダイエットをおこなったりして、症状を軽減させておくことが大切です。
まとめ
いびきには種類があり、睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病を引き起こしたり突然死を招いたりするリスクがあるため、早急に治療開始することをおすすめします。
手術やCPAPで症状を劇的に改善できる可能性があるため、まずはクリニックを受診して医師に相談しましょう。また、飲酒や喫煙、肥満が原因でいびきをかく場合があります。
比較的軽度のいびきは生活習慣を見直すことで改善が期待できるため、重症化する前に対処することが大切です。